松の針　　　　　　　　宮沢　賢治

　さっきのみぞれ　取ってきた　　　　　　　　　
　あのきれいな松の枝だよ

おぉ おまえはまるで飛びつくように　その緑の葉に熱い頬をあてる
そんな植物性の青い針の中に　激しく頬を刺せることは
むさぼるようにさえすることは　どんなに私達を驚かすことか

そんなにまでもおまえは林へ行きたかったのだ
おまえがあんなに熱に燃やされ　汗や痛みで悶えているとき

私は日の照るところで楽しく働いたり
他の人を考えながらぶらぶら森を歩いていた

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鳥のようにリスのように　おまえは林を慕っていた
どんなに私が羨ましかったろう

あぁ、今日のうちに遠くへ去ろうとする妹よ
本当におまえは一人で行こうとするか
私に一緒に行けと頼んでくれ　泣いて私にそう言ってくれ

　おまえの頬の　けれども　なんという今日の美しさだ
　私は緑の蚊帳の上にも　この新鮮な松の枝をおこう
　いまに雫も落ちるだろうし
　そら、
さわやかな　turpentine の匂いもするだろう